完成した”Crystal Ball”は前作からそれ程インターヴァルが無い事もありチャートアクションはそれ程ではございませんでした結構なセールスだった模様。 より洗練/ポピュラー/メロディアス化が成されている事がミソで、更にはかなりの高評価。 Tommy Shawのアレンジ力がギラリと光る感がございます。
リード・ヴォーカルはDennis De Young/James”JY”Young/Tommy Shawと分けられておりますが、James”JY”Youngの出番が少なくなっている事が玉に瑕。 されど作品内の肝心なアクセントとなっており、また巧みな名手ギタリストである事や高音系コーラスの要重視という感がございます。
また、かのGenesisの大傑作「A Trick of the Tail」「Wind and Wuthering」で用いた(最後の楽曲に他の楽曲のパートを纏めて作品の締めとする)手法を持ち込んでおり、 James”JY”Young曰くの「我々はプログレッシブ・ロック・バンドである」という主張が窺えるものでございます。
現在主流で情報量重視で知られる「フラットマスタリング方式」の先駆者で知られるAudio Fidelity社独自リマスターとなります。
非常にアナログ感が有る非常に良心的な音質となっております。
アナログにせよ、CDにせよ、ハイレゾにせよ、SACDにせよ、マスターテープの再現が重要なテーマとなりますが、
ここ近年オーディオファンから「アナログ盤が一番マスターテープを再現しているのではなかろうか?」との指摘が挙がり、
嘗ての名マスタリング・エンジニア故George Marino等が手掛けた当時のアナログ盤が高値で取引される昨今でございます。
されど、こちらにはスクラッチノイズはございませんが.......................
内容は言わずもがな。
ラインナップは全盛期名手揃い。
Dennis DeYoung(Vo、Key)、James”JY”Young(G、Key、Vo)、Tommy Shaw(Vo、G)、Chuck Panozzo(B)、故John Panozzo(Ds、Per)となります。
1977年米国シカゴ毎度御馴染み”Paragon Recording Studios”での制作となります。
プロデュースはバンド自身。制作エンジニアは毎度御馴染みとなるBarry Mrazとなります。
そもそもは、Dennis DeYoungとPanozzo兄弟とのトリオ”TW4”が母体となるバンドでございます。
シカゴ州立大学に入学。バンドと同時並行してミュージカル俳優を目指していたDennis DeYoungがその夢を果たせず、バンド活動に専念。
紆余曲折して大学同期のJohn Curulewski、そして”TW4”とシカゴ界隈では人気であったバンドのギタリストでイリノイ工科大学出身のJames”JY”Youngを引き入れ、五人編成化。
そしてバンド名を”Styx”と改め(←ここ重要)活動開始、当時のメジャーレーベル”RCA”配下の”Wooden Nickel”と契約。
表舞台に登場となります。
Dennis DeYoungが嘗て目指したミュージカル等舞台芸術的な要素とロック音楽の融合という感があり、また当時の英国プログレッシヴ・ロックの強い影響下にある音楽性でございます。
コーラス多用とメロディアス重視、ハード・ロック色を強く加えた非常に躍動感ある音楽性でございますが、バンド音楽性の演劇性絡みでかの”Genesis”を彷彿させるものがございます。
(今作や後の全盛期作品にもその”Genesis”の名盤”Trick of the Tail”/”Wind and Wuthering”の作品形式が取り入れられている事がミソでございます)
但し、初期は作曲に絡むJohn Curulewskiがサイケ/アート・ロック/初期プログレ系指向の音楽性という事もあり、それを加味した音楽性でもございます。
ライヴ・バンドとしての評価も非常に高いもので大物ミュージシャンの前座として起用される事もございましたが、隠れ名盤と呼ばれる四作含め通受けの評価。
メジャー配下レーベルという事もありプロモーションもバンドの望むものとならず、またビジネストラブルもあり、バンドは忸怩たる思いを噛み締めていた感がございます。
遅ればせながら初期の名盤と名高い”Styx Ⅱ”から”Lady”の時期遅れのヒット楽曲が登場も、それを置き土産に離脱。
メジャーレーベル”A&M”(かのHerb Alpert設立のレーベル)と新たに契約。
遅ればせながらの前述のヒットに続け、と傑作”Equinox”を制作となります。
初期のサイケ/アート・ロック系要素を排除し、音楽性をよりメジャーにより洗練度を高め垢抜けた音楽性を指向した”Equinox”でございますが、
制作後に活動に疲弊し音楽性の相違から初期音楽性を担った感のあるJohn Curulewskiが脱退。
オーディション選考で運命の”mr.Popular”Tommy Shawが登場となります。
作品は以前よりも高評価に好セールス。
されどTommy Shawの登場はバンドに相当大きな衝撃を与えた模様で、バンドとしてはヒットらしいヒットとなった”Equinox”のツアーを短期に終わらせ新体制の作品制作に打ち込む事となります。
完成した”Crystal Ball”は前作からそれ程インターヴァルが無い事もありチャートアクションはそれ程ではございませんでした結構なセールスだった模様。
より洗練/ポピュラー/メロディアス化が成されている事がミソで、更にはかなりの高評価。
Tommy Shawのアレンジ力がギラリと光る感がございます。
後の大成功の土台がここで音楽的に築かれた感があり、ツアー後これを基礎に満を持して制作に乗り出す.................という経緯がございます...........
さて今作。
当時の消費文化から象徴としての政治、ショービジネス、個人生活や逃避的希望等々と「現代アメリカ社会という名の大いなる幻想」というコンセプトを基とした作風の感がございます。
但し、タイトル楽曲やかの”Miss America”を含めて、非常に辛辣な歌詞を含むものがミソでございます。
前作で名手”Mr.Popular”Tommy Shaw初制作参加。
(”Equinox”から始まったとは言え)音楽性が非常に洗練されたものとなり、前作で手応えを得て、それを更に発展させた音楽性。
ミュージカル的な音楽性は依然同様であるものの非常に躍動感溢れる音楽性で、楽曲の幅は広いもの。
大作主義的な楽曲から、前作から名手Tommy Shawが持ち込んだフォーク的なもの等々をアート/ロック・プログレッシブ・ロックの米国観で纏め上げたもので、非常に質が高いものではございます。
但し、非常にメロディアス/ポピュラー感の強いものがミソでございます。
リード・ヴォーカルはDennis De Young/James”JY”Young/Tommy Shawと分けられておりますが、James”JY”Youngの出番が少なくなっている事が玉に瑕。
されど作品内の肝心なアクセントとなっており、また巧みな名手ギタリストである事や高音系コーラスの要重視という感がございます。
また、かのGenesisの大傑作「A Trick of the Tail」「Wind and Wuthering」で用いた(最後の楽曲に他の楽曲のパートを纏めて作品の締めとする)手法を持ち込んでおり、
James”JY”Young曰くの「我々はプログレッシブ・ロック・バンドである」という主張が窺えるものでございます。
リリース後は爆発的なヒットを記録。ツアーも大好評で会場も非常に広くなりバンドは大成功の美酒に酔う事となります。
ツアー後は暫しの休息を経て新作制作に取り組む事となりますが、八十年代という新時代に向けて新しい音楽性をジャンルを超えて模索する時期。
されど、バンドは時代に抗う様に再びコンセプト作品を指向する事となります...............................
(それが、次作英国ツアー中での英国音楽メディアの悪意ある酷評に繋がる感がございますが...........................)
メロディアス/ポピュラー重視ではございますが正直、よくこの内容で売れたものだと感嘆する出来でございます。
「ラジオ、テレビ又は雑誌に惑わされるな!彼らは君が如何あるべきかを示してはいるが、それは誰かが作り出した幻想に過ぎない」という歌詞。
時代や情報収集機器変われど、現在も中身は同じ。
今尚現代を鋭く突くものでございます...................................
如何に当時の聴衆が非常に鋭い感性をしていたか?が分かるものでございます..............................................
録音エンジニアは毎度御馴染みとなるBarry Mraz。
アナログ録音での厚みのある音造りと余計なオーヴァーダビングを控え、隙間を活かす音造り。
されど無理に空間を広げないスタジオ録音でモノラル気味に音を中心に集め音の迫力・躍動感を出しつつ、ステレオ感とのバランスを取るという独特のもの。
また、当時の楽器の音色の(シンセ含めた)アナログ感を上手く捉えており、またハイハット等の細やかさに配慮しつつドラム音の立体感と厚みを持たせた独特の音造りでございます。
Styx独特の厚みのあるコーラスを、自然な形で無理に融合せず個性の分離感を捉えつつ融合する録音等々.................
アナログ録音時代のマジックを感じさせるものでございます..................................................
Audio Fidelity社音源選択の御眼鏡に適った理由がここにある感がございます..........................................
この機会に是非。