序　事物の起源を詮索すると、随分奇抜な來曆があり、些して由緒のありそうもない物でもその因つて來たる所以を訪ねると、從來の謬見を廓正させる眞説が藏されてゐて、今までまるで氣づかなかつた事實を知り、正確な資料を發見して、啓發されること一再ではない。　大體、物の始源には新鮮・潑溂、正に伸びんとする力が充溢し、又、奇聞・傳説ニハ、存外、人生の眞實な相が表白されてゐるもので、茲に我々が多大な魅力を感ずるのは、當然なことである。　本書は、有史以前から昭和聖代の今日に至るまでの事實一般──政治・軍事・經劑・文化の諸事項、人文發達の歴史事象の根幹を、千五百餘項目に分つて、巨細洩さず、虚妄臆説を俳し、最も信據するに足る正確な資料に基づき、出所・年代を明記して精選したもので殊に筆者の欣快とする所は、編纂の日時に拘束されず、自由に、周密に、心ゆくまで事象を考證し得られたことである。従つて叙述も出來るだけ平明に、興味と實益とを盛ることに留意した。特に本書の異色とする所は、日本文化の發展を、世界的視野の下に理解し得られるやう解明し、文化史・政治史・人名列傳としても、好箇の内容を整備せんと努めたことである。　惟ふに起源の詮索は、單なる古物漁りとは其の撰を異にし、これに據つて現代文化史の研究に資する點、決して尠しとはしない。從つて起源の詮索は、如何なる時代に於ても重要なる意義を有するものであると信ずる。本書によつて讀者緒彦が得る所あれば、筆者の幸慶之れに過ぐるものはない。尚、本書編纂に當つては、特に、古事記・日本書紀・續日本書紀・公事根元・嬉笑遊覧・昔昔物語・太平記・平家物語・國史大年表（平凡社版）・明治事物起原・起原と珍聞（植原路朗氏著）・事物起原辭典（雨宮信一朗氏著）等の諸書に負ふ所、著大であった。附記して此処處に深甚の謝意を表する次第である。　昭和拾乙亥歳中秋　著者誌■形態：横14.5×縦20×厚4.7㎝　布張り厚表紙　函■頁数：665頁■著者：和田健次■発行者：金子専一郎■発行所：京文社書店■発行日：昭和11年3月25日二版発行■状態：函/傷み　表・裏・背/スレ・布剥げ・シミ・汚れ　三方/シミ・ヤケ・汚れ　見返し/背割れ・ヤケ・シミ　中頁/ヤケ・シミ■対象：古書にご理解のある方■発送：ヤマトコンパクトにて発送　時間指定可#NEZU辞典